「人の手」から「デジタル活用」へ〜建設業の労働時間削減のポイントは?

2022年6月に実施したオンライン調査の結果から、残業時間(労働時間)の削減に成功している企業の特徴は、ITツールを活用したDX導入が進んでいることに加え、「働き方改革関連法」の適用を社内周知し、認知されている割合が高いということが分かりました。そこで今回は、労働時間削減の成否と企業規模や組織構造、デジタル導入の関係性について分析してみました。

前回のレポートはこちら
https://jobs.spiderplus.co.jp/spider-class/984

1. 「労働時間の削減が進んでいる」は過半数

建設業の「働き方改革関連法」の適用(以下、法適用)が1年半後に迫った現段階において、労働時間の削減の進行状況を調べてみたところ、半数以上が、労働時間の削減に進んでいる、と回答しました。

さらに、企業の規模によって労働時間削減の成否に差があるかを確かめるため、従業員数にもとづき5つのグループに分け、それぞれを比較してみました。その結果、300人以上1,000人未満の企業の成功率が76.6%と、他の規模の企業に比べて高い結果となった一方で、30人未満の企業においては40.9%に留まり、企業規模によって労働時間削減の成否に差がありました。

2. 大きな規模ほど専門の旗振り役アリ

企業規模によって、何か組織的な取り組みに違いがあるかを調べるため、働き方改革を推進する担当部門やワーキンググループ(以下、推進部門)の有無について調べてみました。その結果、会社の規模が大きくなればなるほど、働き方改革を扱う推進部門が既にある傾向が見られました。特に1,000人以上の企業の場合、約60%が既に推進部門があると回答しています。

推進部門は本社機能の業務との関わりも多くなりがちです。社員数が多い企業の場合、規模の小さな企業に比べて、新たなプロジェクトが立ち上がった際に担当業務の異動をさせやすいことが、企業規模が大きいほど推進部門を設けやすくなる要因の一つと考えられます。

一方で、社員数が少ない企業の場合、現場業務と兼務を余儀なくされる社員が多くなってしまうことから、「推進部門」としての役割を新たに追加すると、そのまま労働時間の増加に繋がってしまいやすくなるため、推進部門を設けていないことが考えられます。

企業の規模が大きくなるにつれ、推進部門を設ける傾向があることが明らかになった一方で、推進部門の有無と労働時間の削減の間には、因果関係があるのでしょうか。

3. 推進部門がなくとも時間削減は可能…!?

推進部門の有無について、「既にある」と回答したグループと、「予定している」グループ、「予定なし/分からない」のグループで、労働時間の削減に成功している割合を比較してみます。

「既にある」、「予定している」と回答した2つのグループは、労働時間の削減に成功している割合が、それぞれ75%以上を占めています。
この結果の興味深い点は、「予定している」グループの時間削減割合が75.4%で、既に「既にある」グループの77.4%とは2%しか違わないことです。推進部門を設ける意向は、働き方改革推進の課題意識を反映していて、それが労働時間削減の進行につながっていると考えられます。

ただその一方で「推進部門を設ける予定がない/分からない」を選んだ回答者は43.5%が労働時間削減が進んでいる、と回答しています。「推進部門が既にある」「発足を予定している」グループとは30%以上の差があるものの、前述の43.5%は決して小さな割合ではありません。

つまり、時間削減の成否と推進部門の有無が直結する、と断言するほどではありません。
では、時間削減の鍵は一体何なのでしょうか。

4. 労働時間削減「真の推進役」は

労働時間削減のために行なっている施策について、先ほどの段落で言及した「推進部門有無3グループ」の内訳から、部門の有無と具体的な施策の関係を見てみます。

施策は大きく2つに分けることができ、スマートフォンの貸与、ペーパーレス化、オンライン会議、業務ツールやRPAの導入などの「デジタル施策」、もう1つはワークフロー改善、事務作業のアウトソース化の「組織的な施策」です。

前述のように、組織規模が大きいほど、推進部門が置かれやすい傾向があり、規模や予算の大きな組織ほど労働時間削減を目的とした施策の種類が広がりやすく、組織的なものも進めやすいことが伺えます。特にワークフロー改善は推進部門が「既にある」グループで進んでいます。

デジタル施策は特定の現場単位で始めることが可能で、組織的な施策に比べて推進の障壁は高くありません。
「スマートフォンの貸与」「ペーパーレス化」「オンライン会議」のは3つのグループいずれでも上位の施策であり、企業の規模や予算をあまり問わない性質の施策であると考えられます。

一方で、「業務ツールやRPAなどの導入」は、推進部門が既にある・予定しているグループに比べ、予定なし/分からないグループでは約3分の1にとどまっています。

推進の障壁が低いデジタル施策の中でも、ツールの導入は業務効率化の効果が見えやすく、中でも「現場業務ツールの導入」は、人数や予算の規模に限りのある企業にとっても、今後労働時間を削減するポテンシャルを高く備え、「真の推進役」となりうることが考えられます。

5. 推進部門はあったほうがいい、けど、なくても始められることがまだある!

今回の分析結果から、働き方改革の推進部門があるほうが労働時間削減に向けた施策を進めやすいことが明らかになりました。
しかし、これから推進部門を設ける予定の企業や、予定のない企業もまた、労働時間の削減には成功しています。推進部門の有無だけが、労働時間削減の成否に直結しているのではありません。

どのグループにも共通することは「デジタル施策」が行なわれていることです。

企業の規模や推進部門の有無に関わらず、デジタル施策をすることで、労働時間削減という課題に対してできることから手をつけて、進めていくことができます。デジタル施策の中でも、とりわけ「ツールやRPAなどの導入」は労働時間削減のポテンシャルを高く備えています。

推進部門を設けることができれば、専門部署として様々な施策や、新たな技術の潮流に関する情報を集めやすくなり、社内への浸透や、ワークフローや制度の改善にも昇華させやすい環境が生まれます。

法適用まで1年半を切ったものの、何から始めたらよいのか分からない方もいらっしゃることでしょう。まずは着手しやすい施策から始めて、いずれは組織的な施策に広げていくということを、検討してみてはいかがでしょうか。

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