建築・土木・設備業の働き方改革関連法認知に関する調査結果
2024年4月に予定されている建設業における「働き方改革関連法」の適用(以下、法適用)。
残業時間に上限がつき、さらには罰則規定が設けられることから、DX推進による生産性の向上や労働時間の短縮など法適用への対策が急務となっています。
一方、建設業の従事者には、このたびの法適用自体をまだまだ知らない、という方も少なくありません。実際本年3月に当社で実施した法適用に関するウェビナーでも、法適用をご存知だったのは参加者の30%ほどだったことがわかりました。
そこで、建設業界全体ではどのくらい認知されているか、建設業界でSPIDERPLUSのユーザー層が含まれる「建築・土木・設備」従事者のうち、対策に取り組んでいる方はどの様な取り組みをしているのか、対策ができている人はどのくらいいるのか、なぜ対策ができているのかなどを調査するため、アンケートを実施しました。
【調査概要】
- 調査時期:2022年6月8日〜9日
- 調査方法:オンライン調査
<スクリーニング調査>
- 調査対象:日本全国で建設業従事者の男女、20代から60代
- 調査人数:2,711名
<本調査>
- 調査対象:日本全国の建設業従事者で建築・土木・設備業に従事している20代から60代の男女
- 調査人数:800名
目次
建設業界内での「法適用」認知度は16.4%にとどまる
前述のとおり、約1年半後となる2024年4月に迫っている法適用の内容について、建設業従事者はどの程度認知しているのでしょうか。
建設業従事者2,711名を対象としたスクリーニング調査では、法適用の内容について「非常によく知っている」から「全く知らない」の5段階で聞いたところ、「非常によく知っている」「よく知っている」と回答した回答者は、全体の16.4%という結果となりました。
「多少知っている」を加えても39.4%という割合にとどまっています。建設業従事者の間でもまだ高い割合では認知されていないと言えます。
法適用を知っていると回答した方を「認知者」、知らないと回答した方を「非認知者」とし、それぞれのグループの特性を分析してみたところ、非認知者のうち60%以上が30人未満の企業に所属していることが分かりました。
また、本社勤務者、技術者(現場監督)、技能労働者(専門職人)の3つのグループで比較したところ、技能労働者の認知度が20%と低く、本社勤務者や技術者の半分以下という結果となりました。このことから、法適用に対する認知は、企業規模や所属している部門によって差があることも明らかになりました。
建築・土木・設備の3大業種の「法適用」対策、効果のある施策は
さて、ここからは建設業従事者のうち、業種を建築・土木・設備に絞り、800名を対象とした本調査の結果です。
法適用まで残り約1年半しかないなかで、今までの働き方をガラリと変えることは容易ではありませんが、すでに取り組みを始めている企業も数多くあります。
そこで、法適用への取り組みについて効果を出し始めている施策の傾向を、調査結果から見てみました。
<1ヶ月の時間削減自己評価>
法適用の主な内容は、冒頭でも述べたように、残業時間に関する問題がメインです。
すでに何かしらの法適用の対策をしていると回答した方々のうち、約56%の回答者が、労働時間の削減に成功していることが分かりました。なかには月間30時間以上という回答者もいて、企業によっては大幅な労働時間の削減に成功していることも伺えます。
この約56%の労働時間の削減に成功している回答者を「時間削減に成功しているグループ」と定義します。一方で、時間削減について「特にない」と回答している43.9%を「時間削減していないグループ」として、さらに分析しました。
労働時間削減に寄与するものとは?
スマートフォンの貸与・施工管理ツール導入で効率アップ
労働時間を削減するためには、今までのやり方を続けるのではなく、新しい働き方を導入する必要があります。そこで本調査では、労働時間の削減につながると考えられるツールや施策をあげ、その導入状況について聞いてみました。 前述の「時間削減に成功しているグループ」は「時間削減していないグループ」に比べて、ツール導入や就労定着に関する是正、正規・非正規労働者の待遇改善などの制度改善においても、全ての項目で10ポイント以上高い傾向が伺えます。
また、両グループを本社勤務と、技術者・技能労働者の現場勤務に分けて見ると、両方に共通するのは「スマートフォンの貸与」の割合が時間削減グループの40%以上を占めていることです。情報伝達の手段が与えられていることが、時間削減において役割を果たすのではないかと考えられます。
<現場では施工管理ツールの導入も見逃せない>
時間削減に成功しているグループのうち、労働時間削減を目的に施工管理ツールの導入が行なわれていると回答したのは29.8%で、時間削減していないグループに比べると12.2ポイント上回っています。また、時間削減に成功しているグループでは25.1%が「ペーパーレス化の推進」も施策にあげており、スマートフォンの貸与と合わせて、デジタル導入は現場の時間削減に貢献すると考えられます。
「社内周知」は、成功への近道?!
ツールの導入や働き方そのものの見直し以外にも、労働時間の削減に貢献したと考えられる取り組みは、法適用の社内周知でした。
時間削減に成功しているグループのうち、社内周知が「十分に行われている」が7.0%、25.4%は「行なわれている」と回答し、「どちらかというと行なわれている」を含めると、約76%が社内の情報周知が認識されていることがわかります。時間削減していないグループでは社内の情報周知が認識されている割合は約45%にとどまっています。
今回の調査結果から明らかになった周知方法としては「全社メールの配信(41.4%)」「担当部署が作成する文章の掲示(29.6%)」「社内ポータル等でのメッセージの配信(27.1%)」があげられています。一方で、時間削減していないグループの場合、半数以上の回答者が「周知させるための特定の方法はない」と答えています。
この2つのグループの結果から、労働時間を削減するためには、ツールを導入し新しい働き方を取り入れるだけでなく、社内への周知もまた重要な役割を果たしていると考えられます。
前述のように、本社も現場も「スマートフォンの貸与」の割合の高さが時間削減に成功しているグループには顕著でした。オンラインでの周知は、時間や場所の制約を受けずに相手に把握させることができるため、法適用の対応策として重要と考えられます。
法適用にどう間に合わせるか?
2024年4月に適用が迫る建設業の「働き方改革関連法」の認知は、企業規模や所属している部門の違いによって大きな差があることが、調査結果から明らかになりました。特に技能労働者間の認知率の低さは、建設業界全体として喫緊の課題の1つと言えます。
一方で、労働時間の削減を成功させるうえで必要な取り組みについても、今回の結果から明らかになったことがあります。働き方改革関連法の対策には、ツールの導入だけではなく、まずは「情報」を行き渡らせるための複合的な施策が大きな役割を果たしているということです。
約1年半後の適用に備え、効率的に労働時間の削減を進めていくことが建設業界全体に求められています。残された時間は決して長いものではありませんが、何から取り組めばいいのかが明らかとなりました。
<労働時間削減のポイント>
- 「働き方改革関連法」や対策について情報が行き渡ることが重要
- 情報の社内周知が十分に認知されることは労働時間削減に寄与する
- ツールの導入やスマートフォンの貸与など「デジタル」と「情報」はセットに
建設業の方々には、万全な体制で2024年4月を迎えていただきたいという願いから、今回の調査を実施いたしました。また、当社では建設業の方々を対象とした業務効率化サービスを10年以上提供しており、建設業の方々の2024年4月に向けた対策に引き続き貢献してまいります。
参考:[社内周知を伴って働き方改革に成功した事例]
新たな取り組みは部分導入からスタート、便利さを理解してもらったうえで全社展開し、月8.5時間削減
DXツールを導入したことで、社員1人あたり月8.5時間の時間削減に成功したオーク設備工業株式会社。ツールの良さをしっかりと浸透させることを目指し、まずは使う人を限定して導入を開始。「便利だな」と思ってもらうためさまざまな取り組みを並行して行うと同時に、会社全体にツールを使うメリットを浸透させることに成功した。
https://spider-plus.com/case/oaksetsubi/
全社的なDX推進、働き方改革の成功例を公開中
スパイダープラスでは、プロダクト紹介サイトにて建築、電気設備、空調衛生などの導入事例を公開しています。
試験的に導入して、現場、グループ、全社それぞれの単位で労務時間削減や生産性の向上など、働き方改革に成功している企業の取り組みや、ツールの活用について、実際に導入しているお客様の声を紹介しています。
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