グロースステージのスタートアップで働くことは未来にいること

株式上場から丸4年を迎えたスパイダープラスで、開発組織を牽引する人たちは普段どんなことを考えているのでしょう。
社外取締役の広木さんも交えて、技術との関わり、開発組織としての理想像、不確実な時代のあるべき姿など、広く語り合いました。

紙岡保さん<br />(GM、プロダクト品質部長)
紙岡保さん
(GM、プロダクト品質部長)
COBOLを使っていた頃にふとしたきっかけからC言語を独学し、組み込みの世界に身を投じる。その後、アセンブラなどエンジニアとして経験を積んでいくことに。
建設業への従事経験やテック系企業の経営などを経て、2022年よりスパイダープラスに参画、SPIDERPLUSの開発組織を率いている。
藤田智之さん<br />(執行役員 プロダクト開発グループ長)
藤田智之さん
(執行役員 プロダクト開発グループ長)
小学生の時に自宅にあったPCでBASICのプログラムを組んだことをきっかけに作る楽しみに目覚める。
コンピュータの可能性に興味を持ち大学ではニューラルネットワークや強化学習、ヒューマノイドロボットについて学ぶ。
日本アイ・ビー・エムで、大規模システム開発におけるプロジェクト・マネジメント業務に従事の後、スタートアップ企業数社でのプロダクト開発責任者を歴任し、2021年にスパイダープラスに参画。
「エンジニアでいることは飽きないし、AIテクノロジーの進化で世の中が大きく変わる局面にエンジニアとして立ち会うことができる仕事をしているのはとても幸せなこと」と語る。
広木大地さん
広木大地さん
筑波大学大学院を卒業後、2008年に新卒第1期として株式会社ミクシィに入社。同社のアーキテクトとして、技術戦略から組織構築などに携わる。
同社メディア開発部長、開発部部長、サービス本部長執行役員を務めた後、2015年退社。
現在は、株式会社レクターを創業し、技術と経営をつなぐ技術組織のアドバイザリーとして、多数の会社の経営支援を行っている。
著書『エンジニアリング組織論への招待~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタング』が第6回ブクログ大賞・ビジネス書部門大賞、翔泳社ITエンジニアに読んでほしい技術書大賞2019・技術書大賞受賞。一般社団法人日本CTO協会理事。

スパイダープラスの組織成長と開発組織の変化について

藤田さん
藤田さん
スパイダープラスはこの2〜3年のうちに従業員数が増えて、人が少なかった頃とは開発組織も変わってきたことがあると思います。
人が少なかった頃は役割が細分化されていない分、エンジニアが普通にお客様のところに行って要望を聞いて社内にFBをしていたんですよね。
開発組織自体が拡大していくなかで、そうした慣習を全く同じように保っていくのは難しいです。
一方で自ら動いて作ることは、ものづくりで一番楽しい部分でもあり、それをどう担保するか、意識的にどう保っていけるかが課題だと感じています。
SaaSビジネスの事業会社で一番面白いところは、ユーザーから直接お聞きしたことを自ら形にするところにあると思っています。

周りの人が「楽しいよ」と言ったとしても、結局は自分自身が体験することには叶わないです。
そういうことを踏まえて、成功体験をどう実現していけるか、「これは自分が作った」と言えるような体制をどう作っていくかが課題です。

成功体験を作っていくためにも、カスタマーサクセスチームがお客様のところに出向いて主体的に開催している説明会にエンジニアも同席させてもらっています。
そうすることによって、お客様が持っている課題、プロダクトへの要望を、現場の最前線で自らユーザーの顔を見て、誰のために作っているのかをまず把握することができるようになります。

紙岡さん
紙岡さん
そういう機会を逃さないよう、我々が背中を押していくことが重要ですね。

一方で、他の部門の動きを待たずに自ら飛び込んでいって直に聞くことも大事なことだと思っています。
例えば、私自身も昨年、お付き合いの長いお客様のところに単独で飛び込んでご意見をたくさん伺いました。ときにはかなり厳しいお声も頂きましたが、直接お聞きすることで見えてくることが沢山あります。自ら飛び込むことは必要なことですね。

こういう機会を自らが持つことは、広木さんが語る「タスクダイバーシティ」とも通じることだと思います。

広木さん
広木さん
タスクダイバーシティを自らとりに行くことってエンジニアとして大事な要素になっていくと思いますね。
常識が違うところとコミュニケーションをしていかないとイノベーションは生まれません。
ソフトウェアを作るところには、本質的な難しさと偶有的な難しさがあります。
フレデリック・ブルックスが「人月の神話―狼人間を撃つ銀の弾はない」と書いていますが、すぐに生産性を倍増させるような技術や実践、魔法のような特効薬は、今後10年間は現れないだろう、ということです。

どんな技術を使ってロジックを組むか、どこにバグがあるのか、など、技術的な知識は偶有的なものを解決していきます。
例えばクラウドができてフレームワークが新たに開発されてコンテナができて生成AIができていくように、少し面倒だったことは新たな技術とともに解決されていきますよね。

ソフトウェアを作るために、一次情報を得て、お客様が喜ぶために必要なものは何かなど、試行錯誤をして追求する上での本質的なことは変わらないものです。
変わらないからこそ、そこに自ら取りに行くことができるかどうかは技術者としての生産性にも関わってくるのです。

テクノロジストとして腕一本でやっていくと決めて、単にPCに向かって仕事をしていくのではなく、そこから一歩踏み出してみると、本当に解決すべきことは自分が思ったことと違うことに気づくはずです。

何が問題なのかを知るために正しく動いたり、問題を正しく定義することができれば、バグも減るし、本質的な問題が解決して、いいことしかない。
ただ、こういうことはたくさんの苦労の上にしか起きないことなんですよね。
藤田さんも紙岡さんもそういう経験をたくさんしてきたはずです。

適切な失敗や苦労をきちんと与えていくことができて、これが問題解決だと実感できる場所はエンジニアとしてもキャリアを築いていくことができる場所です。
後から振り返った時に「自分の人生を拓いたのはここだ」と思えるような機会を与えていくことで、ポジティブな苦労をみんなができると、その組織はおのずといいものになっていくと思います。

藤田さん
藤田さん
まさに、ポジティブな苦労を適切に経験できる仕組みができるといいと思っています。
私もIBM時代はプロジェクトマネジメントが中心で自分の手でコーディングをすることはほぼありませんでした。
なんとなく物足りなさを感じて個人でウェブサービスサイトを作ったことがありました。

そこで、自分が掛けた労力とユーザーが感じる価値が見合わないことがあると感じたことがあったんです。
労力をかけたことが実際はユーザには大して使われないこともあります、技術者は常にユーザーのほうを向いていかないといけないんですよね。

紙岡さん
紙岡さん
私自身もそういう経験をしたことがあります。
昔働いていた会社では「お客様がほしいものが何なのかを理解しないと、最適な提案はできない」と言われていました。
これはもう、そこの会社の習慣のようなものだったと言ってもいいぐらいです。

営業が聞いたことを鵜呑みにするのではなく、自ら聞きに行くことで、本当に必要なものを見出して開発できるようになる、ということですね。
自らのこうした経験を通じても、適切な失敗をさせることの重要性を感じています。

社会をとりまく情勢が不確実性に富む中で、技術ができることとは

広木さん
広木さん
先ほどタスクダイバーシティについて話しましたが、このことは、世の中がどんどん不確実要素を多くしていることとも関係します。
社会が不確実性に富んでいるということは、どれだけ機動的に適応できるかを求められていること。

不確実性に対して技術ができることって、大きく2つあると思うんです。
1つは世の中の変化に対し適応的に動けること。そのためには文字通りに柔らかくある、ソフトウェア的な要素を備えていることが重要です。
ソフトウェア的というのは、例えばデータを観察して変化を捉えることや、変化に応じて何かアクションを変えることなどです。

不確実性の代表格になるような製造のサプライチェーンのリスクを例に考えてみましょう。
例えば新しい報道が行われたタイミングで誰かが読み取ってサプライチェーンの問題を解決するのに役立てていくためには、人間が調査していると場合によって1ヶ月や1年かかります。
そこにAIを活用して、ニュースが出るたびに調査を自動化すると、変化を捉えて適応することをライバルよりも一歩も二歩も先にできることになります。

そういえば、イチローがインタビューで、「ボールが来るはずのところで待って打つのではなく、来たところに行って当てればいい」と言っていました。
イチローだからできるんでしょとは思うけど、これってダイナミックケイパビリティの本質だと思うんです。そういう能力があれば不確実な時代に適応できるはずです。

もう1つ重要なのは、不確実であるということは、社会が大きな変化をする時期であるということ。そのトレンドの中に入り込んでビジネスチャンスのある世界に突入すること。
見晴らしのよい場所から世の中の変化を見ると大きく変化するトレンドが見えるし、波の中心にいれば波に乗って問題解決をしていくことができる。
これから増える課題を解決することが既に出来ていて、視点をさらに適切に高くすることができれば解決できることをもっと増やすことができます。

昔iPhoneが出た時に、こんなのはおかしい、大して使えないだろうと言う人もいました。一方でそこに可能性を見出して、スマートフォンのソリューションを増やすべきと考えて、ビジネスチャンスを拡げた人もいましたね。
このようにして不確実な時代にはトレンドの中に自ら入り込んでいくことが重要です。

藤田さん
藤田さん
そういう意味ではスパイダープラスもiPadが出て1年ほどの時期にお客様から頂いたご意見を元に、まだクラウド活用も盛んではなかったころに開発したプロダクトですよね。
不確実性をモノにしたといえます。そういうところを大事にしていきたいです。
紙岡さん
紙岡さん
世の中の変化が年々早くなっていて、誰も先の予測ができないぐらいです。
変化するものだという前提で考えなくてはいけないと思っています。

今はAIなど、新しい武器が出ていますが、そういうものを使いこなしながら適応していかなければいけないと思っています。
それは変化に対応できるエンジニア組織の理想像でもあるんです。

藤田さん
藤田さん
エンジニアは新しいものに興味があることが必要ですね。
まだ解決していない課題に対して自ら解決することに知的好奇心をもって取り組むことのできる人であるというか。
AIなども適用しながらポジティブに使っていくマインドセット、考え方が重要だと思います。

改めて今のスパイダープラスのエンジニア組織としての課題とは?

藤田さん
藤田さん
スパイダープラスが向き合う課題や、組織のあるべき姿について、本質的な部分は代わっていないと思います。
ただ、何事も基礎力があってこそ課題解決ができますよね。
ベースの部分を創っていくことを、特に若手に対して仕組み化してできるようにしていきたいです。
IBMでは入社してから6ヶ月間の研修もあり、周りは優秀な方が多く、振り返ってみると非常に恵まれた環境だったと思います。
スパイダープラスでも同じような環境を作りたいと思っています。
紙岡さん
紙岡さん
自分自身が若かった頃を振り返ってみると、「先輩に教えてもらうのではなく盗め、勝手に学べ」という時代でしたね。
ただ、今はそういう時代ではありません。
意図的に必要な情報が目に入りやすいようにしたり、自ら率先して情報感度を高くすることの重要性を説いたりすることも必要だと思います。

今の技術の発信地は相変わらずアメリカも強いですが中国も大きい存在感を発揮していますよね。いかに日頃からアンテナを張って、得た情報を自分の仕事に活かすまでの一連の振る舞いやマインドセットを推奨することについて、エンジニア一人ひとりに対して言っていかなくてはならない、と思っているんです。

広木さん
広木さん
新しいものを持って引っ張っていくのがリーダーの役割。
率先して新しいものを拾って取り組んで楽しんでいることを示していったら必然的にみんな刺激を受けて興味をもって「カッコいい」と、憧れとともに見られるようになるはず。

最近はリモートワークが増えていることから「仕事を盗む」環境もですが、組織の一体感や若い人が育つ環境が損なわれているのではないかと言われていたり、AIによって業務が自動化されることによって、習得の過程でちょうどいい失敗をしにくくなっていると言われています。本当にそうでしょうか。
例えば昔インターネット検索が出てきたときに「こんなのを使っていたら辞書を引けなくなる」と言われていたが、それと同じようなことが起きているだけなんですよ。

グロースステージのスタートアップ企業で若い時期を過ごす魅力は、その先の未来をどれだけ先取りできるか、ということ。
自分自身がミクシーにいた時のことを思い返してみても、ロストテクノロジー的に、オーパーツ的に、自分たちで色々と作っていました。
後から出てきたものに対して「ああ、そういえば2008年頃にこんなものを作ってたよね」と思うことがあるのです。

「2025年にスパイダープラスにいることで、自分たちは社会よりも先にいて未来を見てきた」そう思えるような環境を作ることがスタートアップにいることの魅力ですよ。
我々は建設業の「未来の当たり前」を作るためにいるし、それを提供できるチームにいる。
大変だと思うことがあっても、キャリアが拓かれる場所になります。

こんな人に来てほしい

広木さん
広木さん
最近、自ら自分自身に制限を課してしまうところがあるな、と思っています。

AIが発達して、それを活用することを考えてみると、AIにさせる仕事の内容は自分が「やりたい」と思っていることです。
例えばミーティングの間にAIに指示を出してソフトウェアを開発するように指示を出して作らせようとすることができます。
バイオベンチャーの新薬開発について、生物学の専門性がなくともAIを使って開発状況を評価をさせて、投資すべきところを見極めることに役立てて、伸びそうなところを発見することに使うことだってできます。

やろうとしないのは何故でしょう。

自分で自分にはできない・やらない、と規定していることによって、取り組まずにいることがあるはずです。マインドセットが重要なんですよね。

インターネットが出てきた頃に世界中と繋がると言われたものですが、世界中と繋がった人はさほどいません。
技術フォーラムで海外の人が沢山いるコミュニティで対等に扱われた時に、世界と繋がった感覚がありました。
「自分は英語ができないから」と自らを制限するのではなく、まずは飛び込んでみたことによって新しい世界で得ることがたくさんあったのです。
一旦荷物をおろして、自分自身を制約から解き放って考えるという立脚点に立たないと、できないと思い込んだままです。

これから一緒に働きたい人は、できると思ってどんどん飛び込む才能があって、新しい時代にフィットしながら飛び込み続けられる人です。
こういうことは年を重ねるにつれて得ることが簡単ではなくなってくると思いますが、止めるべきではないし、飛び込み続けるからこそ未来に自分たちはいる、と思えるようにしていくのです。

これらは自らの課題としても考えていることではありますが、そんな風に飛び込み続ける人と働きたいです。

藤田さん
藤田さん
私も感覚としては近いです。
テクノロジーも世の中も変わる中で、自分では思いつかないことを考えてくれるような人が来てくれると楽しいし、そういう人こそ活躍できるはずだと思います。
紙岡さん
紙岡さん
アンラーニングできる人ですね。
私自身もやっていかなくてはいけないことですが、学び直して新しいことにチャレンジできる。
そういう姿勢がなければ組織も事業も成長していかないはずです。
そういう人と働きたいです。


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https://techblog.spiderplus.co.jp/

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