スタートアップの法務はプライスレスな仕事

元検察官で弁護士でもある高橋俊輔さんは、スパイダープラスが建設DX銘柄として史上初の株式上場を果たした2021年に参画しています。

2023年8月現在は執行役員 法務責任者 兼 海外事業責任者を務める高橋さんが法律の世界からスタートアップに飛び込んだ経緯や、スパイダープラスという事業体の中で働くことの価値についてお話を聞いてみました。

法律のプロ集団から未知の事業体へ転身を決めた訳

高橋さんはスパイダープラスに参画される前、司法試験に合格した後、検察官としてキャリアをスタートさせ、東京地方検察庁等での執務、米国留学を経て、退官後に国内の大手法律事務所に移り弁護士として活躍されていました。
まずは検察官として働かれていたことについて聞いてみました。

高橋: 公益性の高い仕事がしたく、司法試験合格後、裁判官・検察官・弁護士と選択できる中で、選んだのは検察官でした。

検察庁で働く中で、多くの事件を担当し、1件1件に当事者の生きざま、人生があり、まさに『社会』そのものを取り扱っていました。
当事者、関係機関等の間で利益対立が起こる中で、結論の妥当性をどう図るのか、最終的に裁判所を説得するロジックや事実評価なども徹底的に叩きこまれました。

また、検察官は一年目から事件の主任として意思決定をし最終責任者となるので寝ても起きても担当する事件のことばかり考える、といった若手時代を過ごしました。

その後高橋さんは、米国留学を経て、決められた職域に限られずに、また、よりグローバルに働きたいという思いを強くし、大手法律事務所に活躍のフィールドを移されました。

高橋: 法律事務所では、国内外の紛争・仲裁、企業間取引等といったものから、国内外のクライアントからの一般企業法務案件等、検察官時代とは異なり、手がける分野も広く、またクロスボーダー案件も多く担当することができ、忙しくも相応に充実した日々でした。

そして、法律事務所で多くのクライアントの事業活動をサポートするうちに、徐々にですが事業体の中で働くということに関心が強まっていきました。

自らが事業を拡大させていくことで社会課題を解決していける、プレーヤーとして活動していけるということに、大手法律事務所でクライアントの組織の外から助言をする専門家という立場と違う魅力を感じるようになっていました。

そのような中で、偶々スパイダープラスの方と出会いました。

訪ねてきたスパイダープラス社員から相談されたのは「スパイダープラスで新しく法務部門を立ち上げたい」というものだったそうです。
高橋さんは、スパイダープラスの事業は当時としてはなじみのないものでしたと回想します。

高橋: 実は初めてお話を聞いた時はどんなことをしている会社なのかはピンときませんでした。

建設業におけるDXサービスを展開するVertical SaaSです、といわれて、なるほどと思うほどには、当時はそうしたスタートアップの最前線に対する感度が乏しかったのだと思います。

一方で、知らないからこそ、目の前に新たな機会がやってきたのならば、まずはやってみるというのもいいだろうと思うようになりました。

そうしてスパイダープラスの皆さんとコミュニケーションを重ねていくうちに、それまでなじみのなかったスタートアップの世界が魅力的なものに見えてきました。

こうして法律の世界に入った頃には想像もしなかった「建設DX事業を行なうSaaS企業の法務」に転身を決めた、と言います。

 

企業法務は事業の成長に不可欠

ゼロから部門を立ち上げた法務が目指したのは、自社の事業同様、DXによる「最先端の法務」の仕組みを設計し、限られたリソースを最大限活用して事業成長に寄与する組織にすること、と高橋さんは話します。
法務の役割と事業の成長との関わりについて、次のように掘り下げます。

高橋: 法務には事業の成長速度を適切にハンドリングする役割があると思います。
それは『守り』という観点のみならず、『攻め』という観点においてもです。

たとえば、法務の代表的な仕事に契約審査があります。
あらゆる取引には契約がつきものであり、契約というのは相手方と一緒になって実現したい取引をスタートさせる出発点となるものです。

自分たちが一方的に不利に陥ることがないように譲れない最低限のラインといったスタンスを持ってリスクコントロールをするとともに、実現したい取引が円滑に進められるように事業部とともに実際に取引のシミュレーションをして適切な内容を条項に織り交ぜるなどしながら契約交渉をしています。

法務機能が未熟ですと、気づかないうちに自分たちに不利な条件で契約を結んでしまうことが起きがちですし、それが事業活動において致命的となってしまうこともあり得ます。

自らの経験も踏まえ、事業体の中にいる法務と外部の法律事務所との役割の違いについては、次のように語ります。

高橋: 法律事務所はクライアントから相談があってはじめてクライアントの法務案件を把握し、プロとして適切に助言をするという立場です。

他方で、法務部は自分たちが当事者となってこれまでの知見をフル活用して事業成長のために意思決定をしていく立場となります。
助言か意思決定か、ここが大きな違いとなると思います。

仕事はとても楽しい、と繰り返す高橋さんは、ゼロから仕組みを作ることにワクワクしながら取り組んでいて、そこには会社のミッションに対する強い共感と、一人ひとり多様なバックグラウンドを持つ仲間から得る刺激もとても大きいのだそうです。

 

事業体にいる法務にもその後のキャリア形成にも必要なのは「マインド」

スタートアップの法務の業務遂行にもキャリア形成にも重要なのは「マインド」と高橋さんは言います。

高橋: 『圧倒的な当事者意識』と『変化を楽しめる』という二つのマインドが大切かと思います。

一般的に法律家はリスク分析が得意です。
ファクトと評価を分け、ロジックを組み立て、プロコンの整理等にも長けているかと思います。

このような得意なことを単なる評論に使うのではなく、ソリューションを考え、意思決定をし、実際に実行をしていくことで、事業成長に寄与していくことが、事業体にいる法務の在り様だと考えています。これが『圧倒的な当事者意識』というマインドです。

次に、『変化を楽しめる』という点です。
スタートアップの魅力として、目の前の環境が目まぐるしく変わる中で自分次第で未来をどうとでもつくることができるということが挙げられるかと思います。

スタートアップにいると、選択肢が眼の前にいくらでも広がっているということに気づかされます。

生成AI等の技術が発達し、これまで価値があった専門知識・経験の中には同様の価値を維持し続けるのは難しいものもあるかと思いますし、変化をし続けるのは世の常かと思います。

こういった『変化を楽しめるマインド』がVUCA*の時代では大事だと思っています。

*VUCA:Volatility(変動性)、Uncertain(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(両義性、曖昧さ)の頭文字をとり、先行きが不透明で将来の予測が困難、の意味

上場し更なる成長を目指す

高橋さんは、自分たちの手で事業や仕組みを作る日々を、まだ誰も見たことのない景色を見ようとしている状況だ、と語ります。

高橋: 上場しここから更なる成長を目指すという現在の会社のフェーズはとても魅力的です。
ここまで事業が成長できたからこそ更なるチャレンジができるわけですし、市場からの期待も大きいと感じています。

高橋さんを語る上で、ゼロから法務の立ち上げに加えて、海外事業の責任者も兼ねていることも外せません。
法務と海外事業を兼務できるのも組織の中にいるからこそ経験できること、と形容します。

高橋: 海外事業は大きなチャレンジであり、大変ワクワクしながら取り組んでいます。

自分たちのプロダクト・サービスが東南アジアなど外国の現場でも使われ始めているということは、自分たちのミッションでもある社会課題の解決が日本にとどまらず、より広い世界で体現できる可能性を大いに示唆するものです。

法律事務所では所属の弁護士でチームを組んで案件に取り込むことも多かったですが、海外事業グループではIT業界、商社、金融、建設業等、それこそ多種多様なバックグラウンドを有するメンバーとともに取り組んでおり、各々が強みを発揮して、海外を飛び回って事業を育てています。

こういった多様性の中で大いに自分の強みを発揮して仕事ができるのも、事業体に参画する魅力だと思っています。

法律の仕事には、インハウスの弁護士や大手企業の法務担当など、安定した環境のもと恵まれた待遇で働く選択肢があります。
スタートアップに参画することの価値を、改めてどう考えているかを尋ねると、次のように語ります。

高橋: 当たり前の話ですが、スタートアップに入った時点での待遇は大手法律事務所のものにはかないません。

法曹資格者などからすると、経済的に恵まれた条件下で働ける選択肢も見つかる中、スタートアップに飛び込むというのは取りづらい選択なのかもしれません。

しかし、自分のパフォーマンスが事業の成長に直結し事業の成長分だけ社会課題に取り組めているという実感を大いに得られるのはスタートアップならではの魅力だと感じています。

人それぞれで大事にする価値観は違うとは思いますが、たった一度しかない人生の中で、変化・チャレンジを楽しみながら仕事ができることを大事にしたいメンバーの参画を期待しています。

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