【顧客レポート】鴻池組の取り組み〜建設業が魅力的な仕事であると認知してもらうには

鴻池組様では2013年よりSPIDERPLUSを導入し、全社的なDX推進が行なわれています。
現場と本社それぞれから見据える課題について、お話を伺いました


お話:
株式会社鴻池組
建築事業総轄本部 工務管理本部 技術統括部 ICT推進課長 波多野純 様
デジタル戦略室 デジタル戦略部長 橋本諭 様

お二人の役割について

橋本様は大阪本社から全社的なDX推進を統括しています。波多野様は各地の現場を飛び回り、施工の効率化のためヒアリングや提案などを行なっておられます。

元々あった、デジタル活用による効率化の意向

SPIDERPLUS導入以前には施工管理の情報共有をPDA端末で行なっていました。元から現場業務をラクにするために、便利なものを取り入れる社風で、時には自社で開発するということもありましたが、同時に他社が開発したものに対してもオープンな姿勢がありました。

働き方改革に取り組む経緯

第2次安倍内閣の「働き方改革関連法」が他業界に適用された頃、建設・物流・医療は改正法の適用まで5年の猶予を設けることが決まりました。日建連が2024年を見据えて働き方改革を進めようと提言したことを受けて、鴻池組としても取り組むことになりました。

当初は会社が主導して進めていましたが、近年では各現場から働き方改革に関する計画や目標を出してもらうことも加わっています。現場が働き方改革を、自らの問題として捉え、取り組むことを目指した新たな取り組みのステージに移ろうとしているのです。

全社的な情報周知・教育機会について

鴻池組では法改正や、デジタル活用について、入社の年次や職位に応じた教育プログラムを複数用意していて、まずは社員一人ひとりが「知る」という機会を座学を通じて得られるようになっています。若手社員は、会社が提供する座学以外にも自ら情報収集をして、資格取得を目指して能動的に学んでノウハウを身に着けていく方が少なくないとのことです。

また、デジタル活用については、各自が能動的に身に着けた知識を配属された現場で使いこなしていくことのできる環境があることによって、それぞれが意欲をもって長く働き、今度はそれを会社の力として蓄えていくことにも繋がります。

それでも容易とは言えない、全社的なDX推進

SPIDERPLUSを2013年から導入してはいるものの、現場が色々制限のある環境、という点は2022年の現在も変わりません。新たに導入したツールを活用していくためには、現場を実際に廻しながら、ツールを活用するために、一時的に覚えるための手間が発生します。長期的に見れば一時的に手間が加わっても、期間全体で残業時間を削減することに繋がるのは明らかだ、と確信した上でツール導入を進めるよう提言をしていきます。ただし、そのことについての受け止め方は現場所長によって一様ではなく、全社的なDX推進にしていくためには継続的なコミュニケーションが不可欠です。

会社全体として特定のツール導入を決めた場合、真に浸透させるためには、現場とこまめなコミュニケーションを重ねながら長期的に様々な取り組みをしながら浸透させていくことが不可欠です。

現場から見る効率化の課題

ICT推進課長の波多野様はこの業界に30年以上身を置くベテランです。デジタル化が進んだり、法制度が改正されても、現場ではまだまだ変わっていない課題があるとお話いただきました。例えば工事における段階ごとの情報効率についてです。設計図面には情報がまとまっていますが、施工を進める人や専門工事を請け負う職人が見て作業を進めるための情報であるためには、設計図では十分とは言えません。

結局は同じ現場を見てそれぞれの立場ごとに図面を書き直して、必要な情報を把握し、作業を進めていくスタート地点に立つことができます。こうした工程は人の手を介して行なわれるため、そこでもまた様々な段取りが発生します。
図面をデータ化し、現場監督が大量の紙図面を始めとした荷物から解放されはしているものの、こうしてまだまだ変わっていない部分があり、効率化を進めるための課題で有り続けているのです。

さらなる効率化の課題と現実

作業員一人あたりの労働時間を削減するためにはデジタル活用に加えて、現場作業の一部アウトソーシングなども組み合わせることができます。一方で、アウトソーシングには課題があります。それは、「手を動かす仕事の喜び」をカットすることにもなってしまいかねないという点です。建設業はビルや工場など、「ものづくり」を、それも大きな規模のものづくりをする仕事ですが、手を実際に動かすことと、効率化とのバランスを保ち、複合的な取り組みによって現場で働く一人ひとりが働くよろこびを持ちながら、効率的に働くことができるように、試行錯誤が続きます。

終わりに:将来を見据えて裾野を広げる

全社的なデジタル活用、情報周知や教育機会など、鴻池組では複合的な施策が功を奏して、2024年4月に間に合わせるべく、残業時間の削減が進んでいます。単に時間削減を達成する以外にも、長期的な生産性の向上や人材の確保のために、建設業を取り巻く環境について、鴻池組創業の地であり、今春に国指定登録有形文化財となった「鴻池組旧本店」の一般公開や、デジタル活用に対する取り組みを知らしめることによって、裾野を広げる取り組みも行なわれています。

建設業が魅力的な仕事である、とより多くの人に認知してもらうことにより、意欲の高い若手人材の確保につなげ、そうした人材が効率的に業務を進めながら、ものづくりの楽しさを自ら感じたり、完成した時の達成感を味わうことでよろこびを持って働き、今度は会社を引っ張って現場で活躍していくことで社会に還元していくことを目指し、新たな取組が始まっているのです。


◆建築・土木・設備業を対象にした調査シリーズ

・「人の手」から「デジタル活用」へ〜建設業の労働時間削減のポイントは?

「人の手」から「デジタル活用」へ〜建設業の労働時間削減のポイントは?

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